〈4つの小道具、甘い日々。CCD〉
***
「CDプレイヤー、こっちに移しちゃったよ」
「寝室でアニソンかよ」
こんな会話で2人の夜が始まった。
「ちがうよぉ。依頼人サンがオマケでくれた『癒し系CD』だよ」
「んなくだらねーモン、もらって来んなよ」
「くだらないかなぁ・・・」
今回の奪還は無限城の城下町。
依頼人はCDのリサイクルショップを経営していた。
「無限城製で、すっごく効果があるってゆってたよ。
寝る時に聴くといいんだって」
「あ?おめー、そんなに癒されてーのか」
蛮にしてみれば、CDで癒されるなんて眉唾だ。しかも
オレ様が毎晩癒してやってんのに・・・と、おもしろくない。
「え〜、別にそんなんじゃないよ。でも何か、試してみたくない〜?」
「そんで、聴きながらヤるってのか」
「もう!聴きながら寝るのっ」
「どーでもいいケドよ。あんまし効果無いと思うぜ」
『癒し』に気をとられて、『無限城製』だということは
たいして2人とも気にしていなかった。
ケース裏の『解説』をキチンと読んでいたら
特に蛮は、決して聴こうとはしなかったろう。
(人生ゲームで懲りていることだし。)
『無限城仕込みの特殊な波長が、あなたの
潜在意識を具現します。
ガマンは一番のストレスです。
ホンネをさらけ出し、フラストレーションを
昇華させる事によって、あなたのココロを癒します。
注) 軽い自白効果・催淫効果有り』
・・・こんな、とんでもない『癒し』とは知るよしもなく
2人はベッドにもぐり込む。
もちろん、蛮は銀次を眠らせるつもりなど無かった。
「あ・・・もっ・・・蛮ちゃんっ・・・」
―――静かに曲が流れる中で、2人は唇を重ねた。
***
どれだけ離れていても、銀次の気配を感じることが出来る。
ましてや、今は、この腕の中。
しなやかな肌を上気させて、甘い唇を預けてくる。
蜜のような褐色の瞳が、蛮を捕らえてフワリと笑う。
蛮は痛いほどに、銀次を感じていた。
(―――コイツって、やっぱし・・・)
キレイだ。
ヤローにキレイなんて・・・他人事なら『バカじゃねーの』。
ケド・・・こいつは、特別。
なんたって、オレ様のコイビトだかんな。
普段からカワイイとは思っている。
こうして抱いているぐらいだから、もちろんホレてもいる。
けれど、今夜はヤバそうだ。
銀次の全てが、己を虜にしている。
「蛮ちゃん・・・大好き」
銀次のやわらかな声が、いつも以上に心地よい。
突然ある衝動がこみ上げて来て、蛮は
らしくない言葉を吐きそうになった。
けれども。
意地を張っているつもりは無いが、スキだのアイシテルだのとは、
とても言えそうもない。
「蛮ちゃん・・・ホントに、大好きだよっ」
何度も何度もそう言うクセに、銀次の『好き』は
決して軽くはない。
毎回、心を絞るかのように、真摯に口にされる。
(そういやぁ、オレは・・・・・・)
一言だって、返してやったコトがねぇんだよな。
実は、気にしていたりもする。
だけど、これからも、きっと言えない。
代わりと言っちゃぁなんだが。
・・・・・・本気で抱きてぇ・・・。
そんで、おめーをもっと、感じてみたい。
***
余計な焦らしは、ナシ。
銀次の快楽を優先する。
銀次のソレを包み込むように握り、
ひきつるほどに先端を露出させた。
ちゅ・・・っと音をたてて先走りの滴をそっと吸い取ると、
前歯だけで刺激を与える。
「あぅ・・・つっ・・・・・・んうっ・・・・・・」
痛みギリギリの快感に、銀次が大きく身もだえる。
硬質の歯が、一番敏感な部分をなぞる感覚がたまらない。
「くぅっ・・・ばんちゃ・・・それは・・・ダメっ」
そう銀次が言い終わる直前に
今度は舌先でなで下ろしながら、根本まで口に含む。
「あぁっ・・・・ふっ・・・」
口内の柔らかさと熱さが、さっきとは全くべつの
とろけるような快感をもたらした。
速くなる喘ぎと脈。銀次のリズムに合わせて
角度や強さを変える。
絶妙のタイミングで切り替わる刺激に
銀次の腰が浮く。
「もっ・・・蛮ちゃぁん・・・・・・上手すぎる・・・よぉ」
かわいい声で啼いて、果てた。
くたくたな銀次の上体をそっと引き起こすと、
キュっと抱きついてきた。
「ねぇ・・・今の・・・すっごく気持ちいい」
素直すぎる物言いに、蛮の顔がふっとほころぶ。
「こんなモンじゃねぇよ」
「んぁ?」
「こんなんじゃ足んねーよ。おめーには、もっともっと
ヨくしてやりてぇ」
背中に回された銀次の腕のぬくもり。
密着した胸に響く互いの鼓動。
そんな些細なことまでが、心地よい。
全くらしくない。
そうは思うものの、自分を偽るコトに
そろそろ疲れていたのかもしれない。
相手を好きなように弄び、乱れるさまを見るのが楽しい。
所詮はテメーの欲を吐き出すただの行為。
そいつを愛だの何だのと、言葉を飾ってオキレイゴトに
するなんて、趣味に合わねぇ。
ずっとそう思ってきたのに。
(しゃーねぇか。なんせ相手は・・・銀次なんだからよ)
ホレた相手なんだからよ。
・・・・・・銀次のしたいように、してやっか・・・。
***
銀次の受け身が、攻撃的。
自覚が無い分、より扇情的。
―――大好きなヒトの唇。
少しだけ口を開いて、受け止める。
差し込まれる舌先を、軽く前歯で噛む。
銀次はそれで精一杯。
あとはもう、夢中になりそう。
(でも、今夜はどうしても。
蛮ちゃんのキスに、同じくらいに答えたい・・・)
蛮はいつも、銀次を一度
一方的にイカせてからコトを進める。
(別に、イヤじゃないんだけど・・・)
自分だけ乱れてしまうことが、ハズカシイ。
それと。
蛮が理性を保っていることが、ちょっと悲しい気もする。
(蛮ちゃんプライド高いからなぁ。何かに『溺れる』なんてコト、
絶対したくないんだろうなぁ・・・。)
でも、オレは結局・・・。
(こんなに好きなんだもん。ガマン出来ないよぉ。
蛮ちゃんのコト、いっぱい感じていたいもん)
結局、蛮に溺れてしまう。
・・・・・・でも、それってズルイよね。
オレ、蛮ちゃんに何かしてもらうばっかりじゃん。
それを待ってるだけじゃ、ダメだよね。
具体的にどうすればいいのか、そんなコト
銀次には分からなかったけれど。
好きだから。
その思いをカラダを通して、伝えたい。
***
息が上がる。
いつもより少しだけ積極的な銀次。
蛮ちゃんがドキドキしてくれたらいいなと
思いつつ、やっぱり蛮に流されてしまう。
「あっ・・・蛮ちゃん・・・」
もうすぐ、蛮ちゃんが来てくれる。
そう思っていたら・・・・・・
銀次のアタマとカラダを溶かした指を離すと
蛮は体勢を変えて、動きを止めた。
「降りてこいよ、銀次」
「え?何・・・」
向かい合わせで蛮の上に座り、両脇に手をまわして
持ち上げてもらったところだった。
「テメーで降りてきな。
オレがこーして支えててやっから」
「・・・まだ、じらす・・・の」
「いーから、好きに動けよ。どこがポイントか、テメーで知っとけ」
「・・・どして?」
「おめー、ねらってたろ?オレを煽って」
図星を言い当てられて
銀次は真っ赤になってしまった。
「だって・・・オレ・・・蛮ちゃんにも何か・・して・・あげたくて・・・」
「あ?充分シてもらってんぜ。舐めたり、啼いたり」
「・・・そーゆうんじゃなくって・・・」
「わーってる。・・・一緒にヨくなりてぇってんだろ」
蛮ちゃん、お見通しだよぉ。
「そのくせ、どうすりゃイイのかワカんねーんだろ、銀次」
あーもう。そのとおりです〜。
こんな状況で、そんな冷静な判断をする蛮ちゃんって、スゴイ。
「・・・・・・えへっ。じつは、そうなのです・・・」
フッ・・・っと、2人で同時に笑う。
「おめーって、ホント素直だな?」
そうなんだ。一緒に気持ちよくなりたかったんだ。
蛮ちゃんもそう思ってくれてるのかな?
「蛮ちゃんも・・・素直になる?」
「ナマイキ言ってんじゃねーぞ」
抱え上げられたまま、下から蛮の先端が
銀次にあてがわれた。
「あ・・・・・・う」
「オレはコレ以上動いてやんねー」
「やっ・・・・・・ねぇ、蛮ちゃ・・・」
「たまには、おめーから寄越してみ?」
「え・・・何で?」
「あ?何となく・・・だよ」
「それでイイの?蛮ちゃんは」
「アホ。おめーがヨけりゃ・・・オレだってイイんだよ」
いつもどうりの悪態なのに
銀次には蛮が照れているように聞こえた。
「辛くなったら、交代してやっから」
「・・・・・・うんっv」
深く深く見つめ合った。
その瞳の中に、映っているのは自分だけであって欲しい。
何を言っても物足りない想い。
もっと、確かめたい。だからきっと、こうして抱き合うんだ。
「来いよ」
声には出さずに、蛮の唇がそう動く。
「蛮ちゃん・・・・・・」
キュっとアゴを上げて目をつぶると
銀次は身を沈めた。
「あっ・・・・・・あぁっ・・・!」
自ら満たす、という行為。
蛮を包み込む、という自覚が銀次を煽った。
「あぅ・・・いいかも・・・」
おずおずと探るように、でも自分の意志で。
銀次は腰をゆらしてみた。
「んっ・・・」
蛮は目を閉じて軽く唇を噛みしめている。
(蛮ちゃん・・・ガマンしてるんだ・・・)
なんか、うれしい。
もう一度腰をゆっくりと落とすと
トクンっと素直な動きが返ってきた。
蛮の唇が薄く開き、まつげが震えている。
それでもまだ、声は出さない。
代わりに銀次のなかで、感じていることを
教えてやった。
(あ。・・・また、トクンってなったよ。
蛮ちゃんも、きもちイイんだ・・・)
そう思うと、たまらなくなって、自然と締め付けてしまう。
「・・・・・・クッ・・・」
蛮が、長い前髪を振り払うように頭を振って
かすかに呻いた。
そんな蛮を見るのも初めて。
自分が動く度に、ゆるやかに髪をゆらす。
(えへっ・・・なんか・・・ダダをこねてるみたい・・・)
「蛮ちゃん、何か、カワイイよぉ・・・・・・」
「うるせー」
小声で言い返される。愛おしい。
少しずつ、銀次の動きが大胆になってゆく。
蛮の息もあがってゆく。
「うぅ・・・蛮ちゃん・・・そんなに・・・反応しない・・で」
「んなコト・・・言っても・・・よ」
ひときわ大きな蛮の脈打ち。
「もっ・・・オレっ・・・ムリ」
体中の力が抜けてしまう。
「蛮ちゃん・・・交代・・・してぇ」
「・・・覚悟しろや」
***
銀次の背をシーツに押しつけて足を抱え直すと
蛮は本領を発揮した。
「あぅ・・・!」
さすがに技量の違いが、銀次を一気に昇らせてゆく。
「あぁっ・・・スキっ・・・ねぇ・・好きだよ・・・蛮ちゃん・・・大好きっ」
「くっ・・・銀次・・・おめー・・・・言い過ぎ」
銀次が常になく大胆で。けど、ワルくない。艶っぽい。
一方的に責め立てるより、楽しいかもしれない。
なるほどな。裸でヤってることなんだ。
ココロも見栄を脱いじまえば、イイってことかよ。
蛮は初めて、口にだしてみた。
「オレにも・・・言えって・・・言わねぇのか・・・」
これぐらいしか、言えなかったけれど・・・。
銀次は言葉をねだったことが無いから。
「いいの・・・そんなの・・・こうして・・・んっ・・・
・・・こうして・・・教えて・・・くれるか・・・らぁ」
ほんとに、言葉なんか、いらない。
ちゃんと伝わってるよ。こうしてつながってるところで。
蛮がどれほど自分を想ってくれているのか。
だからオレも伝えたくて、頑張ってみたよ。
自分がどんなに蛮を想っているのかを。
―――静かに曲が流れる中で、2人は同時に、果てた。
***
すっげーヨかったけど。
どこか、いつもと違った。
まさか、このCDのせいだってのか。
でなきゃ、オレ様があんなにヘタレなワケねぇ・・・。
ジッポの横にCDケースが置いてあったので、
蛮は一服ついでに解説を読んでみた・・・そして
深くふか〜く後悔した。
「クソ〜〜っ。これだから無限城ってトコはよぉっ!!」
「無限城が、どうかしたの?蛮ちゃん」
ぜってー、銀次にゃナイショだ。
あんなのがオレ様の潜在意識だなんて、ざけんじゃねぇ。
「あ?なんでもねーよ」
とりあえず、CDは蛇咬のエジキ決定!
んなモンが、癒しになるかっつーの!
とはいえ、確かに何かがふっきれたコトは否めない蛮であった。
――― 互いを本当に癒せるのは、2人でいることの実感。
この甘い痺れだけ―――。
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蛮銀では、はじめてホンキで18禁書いて
みたのデスが・・・うーんやっぱし部分的にしか
書けなかったのデス。はんぱエロ(笑)
さてさて困った。
ヤってるコトは蛮銀なんですが。
気持ち的には銀蛮になってマスね、この2人。
ワタクシは蛮銀オンリーなのデス。
リバは苦手。
けれど、実は、こんな2人の位置関係なら
けっこうスキだったりして・・・エヘヘv
鬼蜘蛛さんの「下りてこい、奪還屋」
というセリフから出来た、この話。
どーいう思考回路でこんなハナシになったのでショウ?
相変わらず偏った萌え方をしている
ワタクシでございマス・・・。
2003.09.12 by 真。