〈4つの小道具、甘い日々。Bサングラス〉
***
そいつに気がついたのは、1ケ月前の夜。
「はーい。蛮ちゃんどうぞ、お待たせ〜」
コレは『風呂場が空いた、お次どうぞ』っつー意味なんだけどよ。
パジャマがわりのシャツをはだけて
あんまし無防備にパタパタと走り寄って来やがるから。
カンちがいしてやることにした。
「そっか。んじゃ、遠慮なく」
ベッドの上に座り込んで、鼻歌を歌いながら
ボタンをはめている銀次をそのまま押し倒す。
「蛮ちゃん!そーいうイミじゃないって、ワカってんでしょっ」
「あー?聞こえねーな」
いきなりシャツを脱がしてやった。
コイツはいつまでたっても不意打ちに弱い。
そのクセ、こーしてやるといつもより乱れたりする。
「あ・・・シャツ・・・今着たトコなの・・・にっ」
「ヤるこたワカってんだ。脱がされたくて、着たのかよ?」
メンドくせー。このままヤっちまおうか。
オレの方は、帰ってきたときのまんまだ。
奪還の都合上、体裁を整える必要があってスーツ姿。
こっちはスキのない身なりで、一方的に剥いじまうってのも、おもしれぇ。
「もっ・・・何で・・・オレだけ・・・」
「んー?・・・リーマンプレイv」
「もぉっ!・・・何・・・ゆってんのさぁ・・・」
ギリギリまで焦らして、煽って。
耐えかねて銀次がオレの服に手をかけるまで
テメーでは脱がないことにした。
んで。
さーていよいよってときに・・・停電しやがった。
近隣一帯の停電だったらしく
めったに経験出来ねぇような暗闇。
オレはまだグラサンさえも外してなかったから
マジで真っ暗闇だった・・・のによ。
銀次の姿だけが、フルカラーで視界に飛び込んできた。
***
つまり。
銀次の発電は、わりかしヤツの感情と連携している。
たいてい泣いたり、怒ったりで、電撃。
こいつは時々見ることができる。
で、モンダイは『性的興奮』ってヤツだ。
銀次が極限まで追いつめられると
これはある種の不可視光線となって、放出されるらしい。
こいつが邪眼防止の特殊レンズと反応すっと、
青く染まった視界の中で、銀次だけが色づいて見える。
以来、コイツはオレのちょっとした『お楽しみ』ってヤツになった。
***
「蛮ちゃん・・・今日もサングラスしたままヤるの?」
「さーて。どうすっかな」
「全裸にグラサンなんて・・・ヘンタイじゃん」
「おめーは全裸にくつ下ってのは、どうよ?」
「もぉ。蛮ちゃんってば、そんなコトばっかり」
「イヤか?」
「うー。オレが何ゆったって、スキにするクセに〜」
「イヤか?」
「オレが蛮ちゃんを拒めるワケないって知ってるクセに〜」
「おめーがスキにさせるからいけねーんだ」
おうよ。
おめーのせいだ。
「んっ・・・でも・・・くつ下は・・・履かないからねっ」
・・・時々ズレた答えが返ってくるけどよ。
「んじゃ、他のコト堪能させてもらうとすっか」
「また焦らされんのかぁ〜」
「おもいっきしな」
「あ・・・ん」
どんだけこーして押し倒しても、飽きるってコトがねぇし。
「んっ・・・ねぇ・・・オレのカラダが・・・光るの?」
「そっ。おめーの喘ぎに比例してな」
「もぉっ・・・何で・・・そんなコトが・・・楽しいのさぁ・・・」
「さぁな。ヘンタイだから・・・だろ?」
ババァに押しつけられたこの瞳。
コイツのせいで、いつだってオレは青に閉ざされた
視界の中で生きてきた。
銀次。
レンズ越しにおめーが見えた時、オレは・・・
おめーだけが、マジでオレの闇を照らしてくれた・・・・・・
・・・・・・なんて陳腐なコト、ぜってー言えねぇっつーの(笑)
オレはオレ様の流儀で、おめーに想いを伝えてやるからよ。
***
―――もうこれ以上、一秒だって耐えられない。
銀次の全てが訴えてくるまで
キスより先へは進ませない。
言葉にはなかなか出さねぇクセに
サインは頻繁。
テメーの方から手を伸ばして
オレの前髪をクシャっと握る。
唇を離しても、オレの名前を呼ばなくなる。
余裕がねぇからだ。
快楽にゆらぐ腰を、オレの足にすり寄せて吐息をもらす。
・・・もう一押しってトコか。
強く舌を吸いながら、柔らかな金糸の髪へ乱暴に手を差し込んだ。
後頭部をわしづかみにして少しずつ力を込めてやると、
「・・・・・・ばか・・・」
半ばもうろうとした意識の中で、銀次が小さな声をあげた。
こんなにヨくしてやってんのに、『バカ』、だぜ?
ククッ。かわいいよなぁ?
ここまで仕上げたら、少し身を離してキスも一時中断。
組み敷いたまま動きを止めて、銀次の反応を待つ。
「あっ・・・ばんちゃん・・・もう・・・」
来て。
その言葉をワザとキスで封じて、もう一度身を離す。
「あ・・・ぅ・・・ヒドイ・・・よぉっ・・・・・・!」
微かに震えながら、銀次の肢体が淡い光りを放つ。
紫紺のレンズに、銀次の乱れた色香が映える。
はい。よくできました。
オレがグラサンを外すと銀次が縋り付いてきた。
「んっ・・・蛮ちゃん、悪趣味だ・・・よぉ・・・」
「ヤメらんねぇよ。・・・こんなイイこと」
「オレは、ちっとも・・・よくないってばぁ〜」
へいへい。
そんかわし、すっげーかわいがってやっから。
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・・・何だかなぁ〜。
美堂サンってば、銀次にホレれば惚れるほど、
言動がアホになってく気がするんですケド・・・。
まぁ、プライドはむっちゃ高いので、
照れ隠しの反動だと思いマス。
コレね。温泉編で『全裸にグラサン』な
蛮ちゃんを見て思いついた話なんですヨ。
(ココまで妄想するか?)
ホントはシャンプーハットの方が萌えた・・・
・・・なんて、言えナイ。(←どんな萌え?)
2003.09.01 by 真。