〈Bitter smile〉



   *****


 
       (―――こんなウゼェ日差しん中で、よく寝てられんな?)

 
  明け方まで銀次を抱いていたクセに。

  蛮は相棒の深い眠りの原因を棚上げし、感心していた。


  昨夜閉め忘れたカーテン越しに窓から覗く冬空が
  いつの間にかヤケに高く晴れ上がっていて
  時計を見なくとも、すでに昼近いと知れる。


  幾度目かの解放後
  半ば気を失うように寝入ってしまった銀次の傍らで
  まだ何となく躰を持て余した蛮は寝そびれてしまったのだ。


  夜明けの空気が身を包むにまかせて、ずっと起きていた。

  
  正体なく眠っている銀次の体温がイイ感じで、時々うとうとするものの
  体の疲れに反して、頭の芯は冷たく冴えていた。

       

       これから先も銀次と一緒にいるためには
       カタ付けなきゃなんねーコトが、まだある。

       今、コイツに溺れるワケにゃいかねぇのに。
       銀次の前ではオレ様でいなきゃなんねーってのによ。


  昨日の自分を思い出し、蛮はその甘っちょろさに苦笑した。

        
  
   *****



    「で、ドコの神社に行きてェんだ?」

    「えと、あのね、蛮ちゃん。オレ、もうお参り行かなくてもイイや」



  今年の仕事運をもう使い果たすかのような(・・だとしたら冗談じゃねーが)
  小忙しい正月を迎えて、
  ふと気づけば一月も半ばを過ぎていた。


  久しぶりに部屋でゆっくりとくつろぎ中。

  何かとイベントを素直に楽しみたがる銀次が
  初詣に行きたがっていたコトを思い出したので
  聞いた答えがソレだった。



    「へぇ?つい2,3日前の騒ぎとはえれェ差だな」

    「んぁ、オレそんなにうるさかった?」

    「おうよ。オレ様が賽銭やるなんざアホらしいっつったら
     ムクれてたじゃねーか、オメーは」

    「えへへ、そうだっけ? ・・でもオレはね、今
     願い事なんてナイから・・・」

    「あ?ブルー入ってんのか、銀次」

    「違うってば。もう叶ってるから、お参りしなくていいんだもん」

    「どういうこった」


  銀次は突然、キュっと蛮に抱きついた。


    「コレなのv」

    「あ?」

    「オレのは願い事じゃなくて・・・『願い人』だよ」

    「何だぁ、そりゃよ」


  銀次の重みをその腕に心地よく受け止めはしたが
  言葉と行動のイミが解らず、蛮は相棒のカオをのぞき込む。

  目が合うと、クスっと笑いをもらして銀次が自慢げに答えた。
 

    「オレが作った言葉だよ。蛮ちゃんのコトなんだ〜」

    「・・・余計ワカんねーぜ?」



         蛮ちゃんと、一緒にいられますように。それだけがオレの願い。
         だったらお参りするよりも、こうしてそばに居る方が早いでしょ。


    「だからね、願い人なの」

    「願い人、ねぇ・・・」

    「楽しく元気に過ごせますように。ちゃんとシゴトが出来ますように
     それから・・シアワセでいられますように。全部アタマに
    『蛮ちゃんと』が付くんだよ。そうでなきゃ、イミないもの」



  さすが銀次が作っただけあって、理由もセンスもめちゃくちゃだが
  自分に向けられた想いのたけは伝わってくる。
  『思い人』にも似た、それより強いニュアンスで言っているらしい。



    「蛮ちゃんはオレの願いの全てだから」
  


  面と向かって言われてしまうと表情の選択に困るが
  それは蛮の勝手な都合であって
  銀次は構わずに言葉を続ける。

     
    
    「蛮ちゃんさえ居てくれれば・・・オレはもう
     願う事なんて他には無いもんね」

    「へぇへぇ、そりゃどうも」

    「ねぇ、オレも蛮ちゃんの願い人になってる?」

    「・・・オメーはどう思うよ?銀次」



  穏やかに笑いながら抱きよせてくれる蛮を見上げて
  銀次はキスを受け止めた。


  素直に答えてやらないかわり、とばかりに
  甘く唇を塞いでやる。


    「んっ・・・・」

    「・・わーったろ?」

    「うん・・・でも、もう一度教えて?」

    「しゃーねぇな・・」

   

  ―――軽い戯れで始めたキスが、少しずつ深くなってゆく。

   

    「初詣に、行かねェなら」

    「あっ・・・ん」

    「もっと神聖なコトすっか?」

    「・・・うんv」



  今日はやっと、このかけがえのないヒトと一つになれる。

  それだけで 銀次は、ほんとにシアワセだった。
  ・・・今はまだ、それだけで蛮もシアワセだった。



    *****


       オレの願い人はオメーだと言ってやる前に
       寝ちまいやがるから・・・
 

  普段よりしどけない感じや、投げ出された手足のゆるみ加減が
  解放直後の姿(蛮がお気に入りな銀次のカオ等)を彷彿とさせる。
 

  軽く握って口元に添えられた銀次の右手を捉えて
  指を絡ませてやると、ピクン、と反応しながら
  おかしなコトにちゃんと握り返してくる。

  キュっと一瞬締めつけたあとで、また指をゆるめて
  フワっと笑みを浮かべた。

 
  とたんに昨夜の名残のような艶が消えて
  子供のように無垢な銀次がソコにいた。
 
  眠っていてさえ
  こうも自分を翻弄する相棒に苦笑する。
       
  全くもって、見飽きないのだが
  ニコチン切れの鬱陶しさが耐え難くて、ようやく
  蛮はベッドから抜け出した。
 
  窓際へ歩み寄りタバコに火を付けていると
  背後でごそごそと相棒の起き出す気配。


 
    「うぅ〜ん・・・おはよ、蛮ちゃん」

    「よォ。・・・はよ」

 

  微かにジッポの金属音が響く中
  銀次が半身を起こしたのを見て、蛮はまだ
  一口しか吸っていないタバコを無意識に灰皿へ押しつけていた。

  軽く舌打ちする。
 

       何となく苛ついていたのはタバコのせいではなくて・・・
       単に銀次が起きるのを待っていたからだ、とでも言うのかよ?


  認めてしまえば楽なものを、
  蛮は、まだまだ足掻くつもりでいた。



    「やっと姫のお目覚めか」

    「ん〜?・・まだね、アタマが寝てるみたい」

    「・・ったく。手間のかかるヤローだ」 

    「んっ・・・」


  呆れたような口調と裏腹に、つい微笑が漏れる唇で
  銀次のそれを塞いでやった。
 
 
    「これで起きれたか?」
   
    「う・・・ん」


  うなずきつつも、銀次が何事かを訝しむように小首を傾げた。


    「どーした?」
    
    「今さぁ、オレが起きるちょっと前に、蛮ちゃん
     オレの手ぎゅってした?」

    「あー?・・さぁな」

    「おっかしいなぁ。なんかね・・・すっごく大事なものを
     掴んだ気がするんだけど」

    「おおかた、ユメでも見たんだろ」


  
  結局はこんな返事をしていた。
  
  不遜な態度が似合っていると、蛮が
  自分で決めてしまっているから始末に負えない。


    「オメーは寝過ぎなんだよ」
  

  そう言って、蛮は指先で銀次の額を軽くはじいた。



    「・・・ってー」
   
    「ホレ、これで起きたろ?」

    「もう起きてるもん!
     蛮ちゃん、ヒドイや。お返しだ〜っ」


  銀次は蛮に飛びついて、2人でベッドに倒れ込んだ。

 
    「コラっ・・テメッ!何しやがる・・・」

    
 
  銀次の腕をほどこうと、その手を捉える。

  繋いだ手の感触に、銀次が綻ぶような笑顔を見せた。


        (やっぱりアレは蛮ちゃんだ。間違いないもんねー)


    「なーにニヤついてんだよ」

    「蛮ちゃんこそ、笑ってるよ?」




  笑顔とキスで始まる、いつもどうりな2人の時間が
  半日遅れで動き出した。


  こんな些細なコトが楽しいと思うようでは
  やっぱりどーも情けねぇ・・・と、蛮は再び苦笑した。





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今年最初は、こんなカンジでスタートです(*^_^*)

  前半、エロの部分を思い切って削ったら
  ただ単に、銀次にデレデレな美堂さんのお話しに
  なってしまいまシタ☆

  ・・・ヤってる時は、もうちょっとオレ様だったんですケドね(笑)

  えと。もうこのまま おノロケ全開カップル万歳v・・ってコトで!
  ヘタレぎみな蛮ちゃんを追求していこうかと思いますvv

  甘い、というよりは
  ヌルめのイチャイチャ〜な当方の2人共々、
  本年も宜しくお願い致しマスv


        2004.01.13  真。

  

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