〈MELTDOWN/like a blue ice〉  

***

 

     「おめー、よくそんな原色食えんな」

     「えへ。おいしーよ?冷たくって。蛮ちゃんも食べる?」

     「いらね。オレ様食指わかねェ」

     「じゃ、オレ全部食べよーっと。こんどはメロンあじ〜」


 8月と共に、真夏の暑さがやってきた。
 そのせいかここ連日、銀次はかき氷に凝っている。
 ペンギン型の手動式かき氷器を抱え込んで、ぺたんと
 床に座り込み、しゃりしゃりと涼しげな音をさせては

  「イチゴ〜v」「レモン〜v」「カルピス〜vv」

 などと一人で盛り上がっている。
 18にもなるヤローがそんな事をしていれば、
 フツーなら不気味なハズ。
 これがタレてるなら『カワイー』ですむのだが。


    まんまでもカワイーってのか?あの足とか腰とかでよ。
    ・・・ウマソーのマチガイだろ?


 躯を重ねる度に、銀次は予測のつかない発展を遂げる。
 初々しさも、無垢さも変わらないのに。
 艶めかしさが増してゆき、自ら求めるようにもなった。

 最近、銀次に押されてんな・・・という自覚を、蛮は
 ビールと共に飲みほした。
 どちらもホロ苦くて・・・わるくはない。

 
     「何杯食えば気が済むんだ、おめーは」


 呆れたように言ってやると


     「カラダのホテリが冷えるまで♪」


 とのご返事。

    何なんだ、銀次。今ごろ二次性徴かよ? 
    天然にしちゃぁ、ヤケにそそる物言いだ。

 
     「蛮ちゃんこそ、ビール飲みすぎじゃん。ハラでるよ〜?
      そのうちさぁ〜」

     「てめっ!」

     「きゃ〜vv」

   
 やっと借りた部屋に、まだクーラーは付いていないけれど。
 夜がアツイのは、そのせいだけじゃない。


    ***


 銀次は、大きなガラスの器に盛った氷の山を
 サクサクと崩している。
 山の半分は鮮やかなブルーに染まっていた。


    「・・・食いもんの色してねェな」

    「今日のはちょっとスゴイのです!『カクテルフラッペ』ってゆう
     シリーズのシロップなんだよ〜」

    「カクテル?酒入ってんのか、それ」

    「えーと。ブルーキュラソにラム酒の入った『ブルーハワイ』だって。
     ・・・オトナの味だよ」



 大人の味・・・ときたもんだ。


    「このかき氷ってさぁ・・・」

 
 銀次が横目でチラリと蛮を見た。


    「・・・蛮ちゃんみたい」

    「あ?」

    「ね。みて、この色。青に近いブルーだよ。少し紫ががっていて。
     蛮ちゃんの瞳の色だよv」 

    「そうかよ」

    「・・・そういう冷たいトコも、そっくり」

    「ほぉー」



 蛮がそっけない返事をすると、銀次がなにげにつぶやいた。


    「・・・急いで食べるとイタくなるトコとかぁー。・・・けど、
     きもちイイトコも・・・そっくり」



          煽ってんの・・・かよ。天然の『性徴』。


    「・・・ためしてみっか」

    「あ、蛮ちゃんも食べてみる?」

    「ソレはいらねェ。でも味見はする」

    「ふぇ?」


 
 かき氷を大きくすくって自分の方へ差し出されたスプーンを、
 蛮は銀次の手ごとつかむと、そのまま銀次の口元へ突き返した。


    「ほらよ。食いな」

    「え?う、うん」

 
 ぱくり。銀次は素直にかき氷を口へ運ぶ。
 とたんに蛮は、銀次の唇を自分のそれで塞いでしまった。
 深く舌を差し入れると、ラムの香りがする氷ごと、
 銀次の舌をからめとって強く吸ってやる。


    「んっ・・・」


 冷たさと心地よさが混ざり合ったもどかしさで、
 銀次が小さく喘いだ。
 氷が溶けきっても、蛮は唇を離してやらない。
 シロップよりも甘いものが銀次の口内を満たした。



 ひんやりとやわらかな唇の感触を、蛮は存分に味わった。


    「・・・なるほど。大人の味だな」


 糸を引く蜜をワザとらしく指でぬぐって、蛮がニヤッと
 笑ってみせると、


    「・・・でしょ?」


 はにかみながらも、銀次が微笑みかえしてきた。


    「もう一口食えよ、銀次」
 

 かき氷にかまけて蛮が誘う。 


    「うんv」


 サクッ。ぱくり。
 氷を含んだ口元をキュッとすぼめて、
 銀次は『味見する?』と目線で問う。

 冷たいはずの氷が、互いの口を行き来する度アツくなる。
 薄まるはずのシロップが、口移しで甘さを増す。


    「あ・・・かき氷・・・溶けちゃう・・・」

    「・・・溶けてんのは、おめーだろ?」



 かき氷がなくなるまで、何度も、何度も、
 『味見』は繰り返された。


    「んっ・・・蛮ちゃんってば・・・ヒナのエサやりじゃ
     あるまいし・・・いちいちオレの口から・・・
     食わないでくださいー」


 自分で味見させたくせに、銀次がすねたように言った。
 キスの後にちょっと怒ってみせるのは、
 それ以上を求めるときの、銀次のかわいいクセだ。
 だから、


    「ククッ。ヒナのエサやりね。イヤかよ?
     こーいう食い方は」


  とりあえず軽くいなしてやる。


    「食い方も何もー。オレはほとんど味わえなかった
     気がしますー。かきごおりー」

 
    あんだよ。本気で怒ってらぁ。
    おめーの『性徴』は、ここいらが限界か・・・。

 まだまだかけひきを楽しむにはほど遠い。
 正直、安堵した蛮は、あえてこう言ってやる。 
  
                       
    「・・・もっとイイもん味わわせてやんぜ?」 

 
    ***



 微妙な強弱をつけた全身へのキスで、躯中が熱を帯びている。
 なのに、キス以上の刺激は与えられないままに、
 銀次は上体を引き起こされてしまった。
 右手の人差し指を丹念になぶられ、蛮に向かい合う形で
 膝抱っこされたとたん、ふいに蕾に指をあてがわれた。
 ・・・しかも自分の指をだ。


    「やっ・・・ちょっ・・・なにす・・・んの」

    「イイもん味わわせてやるっつったろ?」



 蛮のしなやかな左手に操られて、
 己の指で、己のそこをゆるめさせられる。


    「やだっ・・・あ・・・イヤっ」


 何をされるのか不安がって身を離そうとする銀次を
 強引に抱きしめると、蛮は銀次お気に入りのトーンで
 ゆったりと言い聞かせる。


    「大丈夫だ・・・銀次・・・悪いようには・・・しねぇって」

    「で・・・も・・・」

    「おめーの具合の良さを・・・味わってみ?」

    「えっ・・・?」


 指先が第二関節あたりまで埋め込まれた。


    「あぁっ!」

    「ゆっくり・・・な」


 緊張した銀次の背中を右腕で軽くあやして、
 埋まった指をそっと押してやる。


    「あ・・・はずかし・・・ぃよ」

    「ねぇよ。銀次。・・・根本まで入った」

    「つっ・・・」

    「いてぇか?」

    「・・・たくな・・・ぃ」


 銀次の右手首に自分の指先を添えると、
 ゆるゆると動かすように誘導してやる。


    「あっ・・・こんなの・・・いつもと・・・ちがぁ・・・ぅ」

    「な?すげー指を締め付けて来んだろ?」

    「ん・・・ぅ」

    「そのまま、指入れてろ」



 そう言って蛮は器用に上体を傾けると、胸の粒を口に含んでやった。


    「は!・・・ぅ」

    「今、キュッてなったろ」



 粒に舌先をあてがったまま、もう片方は指で軽く潰してやる。


    「ふ・・・ばん・・・ちゃ・・・」

    「すっげ、アツイだろ。おめーん中」

    「う・・・ん」

    「ちょい、腰あげろ」

    「あ・・・」


 切なげに動いている銀次の指を追うように、
 2本目として蛮は自分の中指を入れてやった。


    「く・・・」

    「・・・ここが、おめーの好きなとこ」

    「やっ・・・」


 
 蛮の指先が、やわらかなポイントを突く。
 それを自分の中で、自分の指先からも知らされる。



    「な?・・・んでこっちが・・・コリコリしてっとこ」

    「あぅ・・・な・・・んかイイよ・・・ぅ」

    「だろ?」

    「ぅん・・・ゆ・・び・・いっしょに・・・入ってんだ・・・ね?」



 何が、どこが、どう感じているのかワケがわからなくなりそう。
 自分の指を締め付ける、自分のキツさ、アツさが快感となって
 はね返ってくる。隣に触れる蛮の指が、更に快感を煽る。


    「このままイカせてやっから。そん時のおめーん中、
     どんだけイイか確かめてみ?」

    「ちょ・・・ダ・・メ・・・これいじょ・・・されたら・・・」 

    「るせ」



 すでに立ち上がりきったソコに歯のウラをあてると、
 一気に喉奥までくわえ込んでやる。



 「あぁっ!」

 
 銀次の示すピクピクとした快楽の波に合わせて、蛮は
 巧みに舌を駆使した。

 瞬く間に銀次は陥落していった。

 
  ***  



 汗ばんだ白い額に何度か唇を落とし、乱れた金糸の髪を
 手ぐしで整えてやった。


    「ばん・・・ちゃん」


 解放の余韻をにじませて、銀次が愛おしげに
 その名を呼ぶ。

    くっ。たまんねェ。
    前戯でこの色香はどーよ。


    「蛮ちゃん・・・」


 叫びすぎて掠れた声が、扇情的に蛮の中心を撃つ。

    やべェ。ギリギリだ。

 もし、銀次がイロゴトに精通して、本気で蛮を挑発
 するようにでもなったら―――

 ――― 一撃で爆死かよ?オレ・・・。

 見てみたい気がする。
 溺れてみたい気もする。
 けれど。

 やっぱ、いーわ。おめーはそのままで。
 かけひきを楽しむなんざ、本当は―――

 ・・・んな余裕ねェよ。


    「蛮ちゃん?」 

    「んだよ」

    「どったの?」

    「どーもしねェ」

    「・・・続きも、しないの?」

    「する」


    「あ、じゃあオレ、かき氷作って来るv」

    「・・・オイ」


 
 ホントに銀次は予測がつかない。


    「食欲性欲同時進行かよ?」

    「食欲はオレの担当です。あとは蛮ちゃんの担当です」

    「わーってんよ。んなコトは」

    「今度はオレが、蛮ちゃんみたいなかき氷食べて・・・
     そんで、蛮ちゃんを食べちゃうのvえへっvv」 


 
 言うようになりやがった。
 ・・・ったく言うようになりやがった。


 あんまし、おめーが、アツすぎて・・・


 
 ―――溶けちまうかもな。



                       ―――END―

――――――――――――――――――――――――――――――






 えー。「本番ナシ」なのにイロっぽい・・・を
 目指してみたのデスが。イロではなくて、エロになりました(笑)
 かき氷を交互に食べるだけだったハズなのに、書き出したら
 2人が勝手に暴走しちゃいました。
 ワタクシ、まだまだ修行が足りないようでございマス。
      by 大沢 真
 
 P.S   
 「もっと暴走しろー」とか思った方vぜひお友達になってくだサイv


  2003.08.09

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