〈4つの小道具、甘い日々。Aシェーバー〉
***
あん。もう!昼間だってのに〜。
蛮ちゃんがモゾモゾとオレのコトいたずらしてんの。
オレはまだ寝ていたいよ〜。
奪還の下調べで2日も張り込みして、帰ってきたのは午前2時。
オレ、とても疲れたし、眠かったのに。
「どーせこんなハンパな時間だしよ」
それって理由になりますかぁ〜?
「ちょうどいいじゃねぇか。また深夜の張り込みだ。
朝までちょっとヤっといて、夕方まで寝てりゃいい」
うー。ちょっと、じゃなかったじゃん。
オレ、もうヘトヘトになって、バタンきゅ〜でした。
うぅっ。それなのに〜。
「やっ・・・蛮ちゃん・・・そんなトコ・・・ちゅっ・・・って
したら・・・んっ・・・」
「したら、もっかいヤりたくなんだろ?」
オレの足元にいるから、顔見えないけど。
蛮ちゃんの頭、アクマのツノが出てんだよ、きっと。
「・・・夕方まで・・・寝てていいって・・・ゆった・・・んっ」
「んじゃ、おめーは寝てなー。オレのことは気にすんなv」
まったくもー。どーしてこう、蛮ちゃんは・・・。
『気にすんな』って、すっごくうれしそうな声で・・・。
・・・そーいうコト、するのかなぁ・・・。
「はう・・・んっ・・・・・・」
「ん?寝てろって」
「も・・・イジワル・・・だよ」
「コッチは起きたがってんぜ?」
「あぅ・・・」
―――んあっ?
―――アレッ?なんか、チクチクする。
まって、蛮ちゃん。
「ちょっと・・・まって・・・あっ・・・イヤッ」
「イヤじゃねーだろ?銀次」
「ちがうの・・・何かおかしいの」
「イイぜ。・・・もっとおかしくなれや」
そう言ってオレの上に覆い被さると
おでこやほっぺたにたくさんキスしてくれた。
・・・のは・・・いいん・・・だけど。
「イタッ・・・。痛いってば、蛮ちゃん」
「あ?何でキスが痛ぇんだ?」
ワカんないって言おうとして、蛮ちゃんの顔を見たら・・・。
「あ・・・」
「―――。」
オレ、思わず蛮ちゃんのアゴ、つかんじゃったよ。
ポツポツってね、無精ヒゲはえてた。
うーん。初めて見た〜。
なんかね、ちょっとうらやましかった。
***
「・・・銀次!」
「あ。ゴメン蛮ちゃん」
あわててオレが手を離すと、
今度は蛮ちゃんがオレのアゴをつかんで
クイッて上向けた。
「ったくおめーは何すっかワカんねぇな?」
・・・って苦笑したんだ。
オレ、ドキッとしちゃった。
だって今日の蛮ちゃん、いつも以上にオトナってゆうか
すっごくオトコらしいんだもん。
「蛮ちゃん・・・カッコイイ・・・。」
「・・・間違っちゃいねーけど、今度は何言い出す気だ?」
「痛いからちょとヤだけど・・・いいなぁ・・・」
オレはもっかい手を伸ばして、
蛮ちゃんのアゴをなでなでしちゃいました。
「あぁ・・・ワリぃ。銀次」
「ん?」
「コイツだろ?」
そう言って、起きあがると
無造作に自分の頬をさすって・・・
そんなしぐさが、もう、ホントにカッコイイんだ。
「肌・・・キズついてねぇか?」
「うん。だいじょうぶだよ」
オレも起きあがって、笑いかけたら、
蛮ちゃんが、ぷって噴きだした。
「そういやぁ、おめーはツルツルだもんな?」
「オレって、やっぱし成長遅い?」
・・・・・・ どうすれば、はやくオトナになれるんだろう?
「あ?んなもん個人差だから、気にすんなっつったろ」
蛮ちゃんは、そうゆってくれる。
「・・・必要なトコ、こんだけ成長してりゃ、オレ様は満足v」
そうもゆってくれる。
***
歯ブラシと、数枚の着替えと、蛮ちゃん。
オレの生活用品って、それぐらい。
「オレ様は『品』じゃねェ」
って、蛮ちゃんはゆうかもしんないけど。
ホントにオレは、それだけあれば充分なんだもん。
だからね。部屋を借りたときは、ちょっとびっくりした。
蛮ちゃん、たくさん買い物するんだもん。
また、いつもの浪費グセかなぁって思っちゃったよ。
そのあと2人で手分けして片づけてると、
(・・・ってゆっても、オレが「蛮ちゃーんコレはどこ仕舞うの?」
って、聞いて。
蛮ちゃんが「あ?そのへん」っていうのの繰り返しだったけど。)
シェーバーの箱が出てきた。
「蛮ちゃん、こんなものまで買ったの?」
「そろそろ使おうかと思ってよ」
蛮ちゃんが使う?ってことは・・・。
「えぇっ?蛮ちゃんって、蛮ちゃんって・・・ヒゲはえたりすんの?」
「あ?2,3日もほっときゃ、目立つぐれーはな」
えぇー。いつのまに。
なんだか、少し、ショックでした。
蛮ちゃんが、どんどん先に行ってしまう。大人になってしまう。
考え方も、言動も、蛮ちゃんはもともとオレよりずっとオトナだけど。
仕事でも、バトルでも、蛮ちゃんには絶対かなわないけど。
こんなコトですら、オレは蛮ちゃんに追いつけない。
・・・・・・オレは、蛮ちゃんに・・・追いつけない。
夕飯は引っ越し祝いだからってことで、
せっかく高級寿司屋に行ったのに。
オレ、何だかムネが一杯で、ほとんど喰えませんでした。
蛮ちゃんが、ものすごく驚いて、ホントに心配してくれました。
あ〜ぁ。オレは蛮ちゃんに追いつけないだけでなく、
こんなに迷惑かけちゃったりまでしてるんだ・・・。
それで、オレ、部屋に戻ってから
「なぁ、銀次。何かあったのか?オレ様に話してみ?」
って、蛮ちゃんにゆわれて・・・
「オレ・・・はやく『男』になりたい・・・」
って、ゆっちゃったんだっけ。
『男の子』じゃなくて、『大人の男』ってつもりだったんだけど。
蛮ちゃん、なんだか・・・あわててたっけ。
***
オレがあの時のコト思い出して、いろんなこと考えてたら。
蛮ちゃんに、こめかみグリグリされちゃった。
「銀次〜。おめー、まだヒゲなんざに執着してんのかよ」
「オレが執着してるのは、ヒゲじゃぁなくて、蛮ちゃんにです」
「ククッ。わーってるって」
この余裕が、オレにはとても、まぶしいんだ。
・・・そっか。 オトナって、余裕があるってコトなのかな?
「・・・蛮ちゃん。ちゃんと待っててね。オレが追いつくまで」
そんなこと、ホントはゆわなくったって、
蛮ちゃんは、いつだって、いつまでだって、待ってくれている。
今ではそれを知ってるから。
オレは、もう、あせったりはしないよ。
ギュウッって蛮ちゃんに抱きついたら、
蛮ちゃんのいたずらスイッチ押しちゃったみたい。
・・・・・・んぁ〜。ヒゲを剃ってからにしてください〜。
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初の銀次視点でのお話デス。
銀次口調って、思ったよりずっとタイヘン。
あんましおバカやロリにならないよう。
でもちょっと、カワイく。
しかもうっかりすると、文章が「蛮ちゃん」だらけ・・・vv
この話を書くために、弟にTELしちゃいまシタ。
「アンタ、18才の頃、ヒゲ生えてたか〜?」って。(笑)
2003.08.24 by 真。