〈〜hides and they are things〉
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「あっ・・・蛮ちゃん・・・・・っ・・」
「もっと汗、かけよ・・・」
「やっ・・・ねぇ・・・もう・・」
快楽に耐え、自然と上向く銀次の白い喉に
また一滴、汗が伝い落ちた。
先程までは不快の原因であった湿気すら、躯を重ねれば
愉悦への誘因となる。
・・・ピチャ・・・・ピチュ・・・
微かに、微かに・・・水音が薄暗い部屋に響く。
ひさしからこぼれ落ちる雨粒が、窓枠を叩く音だと
銀次は自分に言い聞かせてみた。
でないと・・あんな音が・・・自分の足元から響いているなんて・・・。
現状を意識してしまうと、今更のように体が熱くなる。
さんざん焦らされて、限界ギリギリで解放を引き延ばされて・・・
銀次は窓の外に目を向けて気を紛らわそうと思ったのだが。
慣らされた躯を誤魔化すことは出来なかった。
「・・っ・・・うぅん・・・・っあぁ・・」
「・・・ほら・・・これでオメーのカラダ全てが潤った・・」
窓の外は、雨。
しとしとと、降り続く雨。
ガラスの外側。
透明な雫が、際限なく伝い落ちる。
・・・自分の中心も、柔らかな舌に煽られて、同じ反応を示して・・・。
濃密な湿気を含んだ重い空気が・・・思考力を奪ってゆく・・・
汗が伝う。
密が伝う。
絶え間なく降り続く雨に煽られて、溢れ出る。
溶けてゆく。いっそ、気持ちイイ・・・。
*****
梅雨は奪還屋業をおおいに妨害する。
なんせ、せっかく貼って回ったビラは湿気や雨でスグに剥がれ落ちる始末。
ビラを配って営業しようにも、カサを手にした人々は
いつも以上に2人を無視して通り過ぎてしまう。
ところで。
新宿は地下街が多くて、スペースも広い。
悪天候でも、気にせず営業するにはもってこいだ。
・・・とはいえ、ビラ巻きにも漠然と『縄張り』というものがあるので・・・
この梅雨時の一等地を確保するには、相当のショバ代を
『その筋』に払う必要があるワケで。
迂闊に場所変えするワケにもいかないのだった。
つまり。商売あがったり。
ヘヴンなりポールなりから依頼の紹介が無い限り、何もするコトが無く
部屋でボーっとするハメになる。
空気は過剰に潤う時期だというのに。
2人にとっては干上がる危険の多い、イヤ〜な日々であった。
・・・ただし、それは、去年までの話。
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今日も朝から激しい雨。
カラカラと壊れかけた扇風機の音が、蒸し暑い部屋に虚しく響いていた。
「クソー、暑ィ〜〜やってらんねぇ」
「・・・だからさぁ、こないだの奪還料、パチンコに使っちゃう前に
クーラー買っておけばよかったじゃんか・・・」
「るせぇ。不快指数があがるようなコト言うなー」
寒いのも嫌いだが暑いのもキライ。
などと、しごく正直(本人曰く)なオレ様が
不機嫌面で競馬新聞なんぞを覗いていたとき。
「あ、そうだちょっと待ってて。『対暑法』てゆうの試してみるからね!」
きっかけは、満面の笑みで差し出された一杯のお茶。
「はい!どうぞ、蛮ちゃん」
珍しくキッチンに立った相棒が、アツアツのお茶を汲んできたのだった。
「はぁ?何だこりゃぁ」
「暑い時にはね、アツ〜イお茶飲むとかえってスッキリするんだって!」
「・・・・・・」
確かに、そういう考えもあるだろうとは思う。けど。
「オレ様は・・・良く冷えたビールでスッキリしてぇ気分・・・」
「ええー?せっかく淹れたのに飲まないの?蛮ちゃん」
「ま、アレだ。オレの分もテメーにやるよ。遠慮すんな」
「ポールさんに教えて貰ったのになぁ・・」
銀次なりのココロ使いは嬉しいし、ガッカリした顔を見ると
ちょっとは悪ィかな、とも思う。
けれど。
寒梅雨ならばともかく。
気温も湿度も高い部屋で、昼間っから2人して茶をひいてるなんて、冗談じゃない。
「じゃぁ、オレだけで飲もうっと・・」
そんな銀次の声を聞き流し、蛮は自分用に麦茶を汲みに行こうとした。
「ぅ・・・んっ・・・あー・・」
不意のあえぎ声(?)に、蛮の足が止まった。
何のことはない、銀次がお茶を飲みつつ息をついただけなのだが。
「あっ・・つ・・・・・ふぅ・・・」
上気した肌にうっすらと汗を浮かべ、しかめた顔がヤケに色っぽくて。
どうせコレだけ汗をかいているのなら。
・・・いっそのコト、思いっきし濡れちまうってのはどうよ・・
「なぁ、銀次ィ・・・オレ様の対暑法っての、試してみねぇか?」
「え?」
「溶けちまいな、銀次」
「・・・んっ・・・」
塞いだ唇が、いつにも増してアツかった。
*****
「もっと・・・オレを・・トロトロにしてぇ・・」
こんなにも扇情的で・・・でも、淫らさよりも清らかさを感じるような
銀次特有の凛とした艶。
退屈と不快凌ぎに、ちょっと戯れてみただけなのに。
梅雨空に閉ざされた空間は・・・思いがけず、麻薬めいた効果をもたらした。
「アツっ・・・マジ、ヤケド・・・しそう・・」
―――熱にうかされてゆく2人。
「このまま溶け合っちゃいたいねぇ・・」
「・・・あぁ・・・」
いつもよか、ずっと激しくって。
息も出来ないぐらい、アツくて苦しくって・・・でもキモチよくって。
これまで単に不愉快なだけだった梅雨の季節。
今では・・・秘め事を楽しむ口実。
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10000HITニアミスで、リクして下さった若葉さまに捧げまーす。
・・・といっても、何だかえらーく短いうえに・・・このうえなく内容薄・・・(泣)
あわわわ。申し訳ゴザイマセンですぅぅ〜〜〜。。。
『雨の日に部屋でイチャつく2人』・・・からはほど遠い・・ですよね・・・。ううう。
こんなんでスイマセ・・・!!今んトコこれで精一杯なので許してやって下さい!
しかも、思ったほどベトベト(笑)にはなりませんでした。
18禁にもなりませんでした〜〜(笑)←笑ってゴマカすなってばぁ(-_-;) 2004.07.28 真。